井端 純一ホームアドバイザー代表取締役社長
5年に一度行われる住宅・土地統計調査(総務省統計局)によれば、2008年時点で、日本の住宅数は5759万戸。その13.1%が空き家だ。すでに供給過剰と言える不動産市場において、住まい探しはどう変わっていくのか──ホームアドバイザー、井端純一社長に聞いた。
- いばた・じゅんいち、同志社大学文学部卒。リクルートを経て、『週刊CHINTAI』『ZAGAT SURVEY』取締役編集長などを歴任。2003年、ホームアドバイザーを設立。新築物件・土地検索サイト「新築オウチーノ,ホームプラザ」、中古物件検索サイト「オウ チーノ」、リフォーム業者入札サイト「リフォーム・オウチーノ」をオープンする。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通)など。
――かつての新築偏重の時代から中古も選べる時代へと、大きな変化が見られます。
新築か中古かは、志向性の問題。どちらが優れているというものではありません。
建売りの新築は既製服のようなもの。魅力を感じる最新の設備が整っていて、最大公約数的ないい家。ただ、新築できる土地に限りがありますから、選ぶ地域の幅は狭まります。
一方で中古は、豊富な物件数から選べるうえ価格も安い。自分のライフスタイルに最適な家へリフォームもできます。ただ、オール電化など最新の設備に一新できない場合もあるし、すべて最新のものにすれば、相応の費用がかかる。優先順位をつけて手を加えていくしかありません。
欧米では中古が主流であり、今後、中古市場は欧米並みの規模に広がっていくでしょうが、選択肢の一つとしての新築も根強く残るはずです。
――空き家率が13%を超え、さらに高まりそうですが、今後の不動産市場はどうなるとお考えですか。
一生、一つの家に住み続けるという既成概念にとらわれる必要はありません。物件の選択肢が増えること自体は、喜ぶべきこと。ライフステージに応じて気軽に住み替えられる時代になれば、もっと豊かな人生が送れると思います。
経済的余裕のない10代~20代前半は賃貸に住み、20代後半から50代の間に、結婚や子どもの成長に合わせて家を買う。そして、定年退職や子どもが独立する60代~70代は、郊外の戸建てを売って、便利な都心のマンションや自然に恵まれた暮らしができる物件を購入し住み替える、といったライフスタイルが一般的になれば、空き家率が上がっても、不動産市場は今以上に活性化します。
部屋がいくつもある豪邸に住む方の話を聞いたことがあります。子どもが独立し、夫婦二人で暮らすようになった老後は、二間しか使っていなかったそうです。広い家は、庭の手入れや掃除など手がかかりますし、広すぎる空間で寂しく暮らすなら、コンパクトなマンションに住み替えたほうが、よほど幸せに暮らせます。家にしばられない新しい住まい方が浸透すれば、と期待しています。
――それが実現する条件は。
住宅購入にかかる税負担が欧米並みに下がることですね。
家は生活の基礎財なのだから、税制上考慮が必要なはず。欧米では、生活必需品である食料品等に加え、家も非課税というのが一般的です。
2010年、景気対策として税制優遇措置が取られたことで、不動産市場は下支えされましたが、抜本的な見直しが必要。もし、消費税が10%に引き上げられれば、5000万円のマンションを購入した場合、土地代1500万円が非課税としても、350万円の消費税を払わされることになります。財政改革のための増税は必要でしょうが、生活の基礎財である家まで消費税10%としたら、消費者心理が冷え切ってしまいます。複数税率とするべきで、「面倒だから、皆が先進国の状況を知らないから一律でよし」ではダメなのです。私を含め、国民が意識を高めて、声高に訴えていかなければ、この国は大変なことになってしまいますよ。
(制作/ダイヤモンド社 企画制作チーム)
※この記事は、週刊ダイヤモンド別冊『究極の「住まい」を探せ!』を基にダイヤモンドオンラインに掲載された、弊社代表井端のインタビューを転載した内容です。