井端 純一ホームアドバイザー代表取締役社長
長年、新築偏重が続いていた日本の建設・不動産業界。しかし、国の「フローからストックへ」という政策転換もあり、近年、中古市場は急速な拡大を続けている。市場構造が変われば、業界の勢力図も大きく塗り変わる――その意味で建設・不動産業界は、大きな転換期を迎えている。そこで、設計事務所、工務店、物件情報サービスという業界内の異なる立場の3人に集まっていただき、中古市場のこれからと魅力的な住宅づくりについて語り合ってもらった。
- 井端純一
物件情報サービス会社経営
ホームアドバイザー代表取締役社長
同志社大学文学部卒。リクルートを経て、「週刊CHINTAI」「ZAGATSURVEY」取締役編集長などを歴任。2003 年、ホームアドバイザーを設立。新築物件・土地専門サイト「新築オウチーノ,ホームプラザ」、中古物件専門サイト「オウチーノ」、リフォーム会社マッチングサイト「リフォーム・オウチーノ」、建築家検索サイト「建築家オウチーノ」、お部屋探しエンタメサイト「キャリルーノ」を運営。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通)など。
――日本の中古文化はまだ発展途上
井端 これからは中古の時代だとさかんに言われ、実際、中古市場は急成長しています。しかし、住宅購入といえば中古が当たり前の欧米と比べれば、日本はまだまだ。欧米並みに〝中古文化〟が浸透するには、いくつか大きなことが欠けているように思うのです。
大塚 井端さんは、日本は住宅購入にかかる税負担が大きすぎる。家は生活の基礎財なのだから、生活必需品である食料品などとともに非課税にすべき、と多様なメディアで主張しておられますね。私もまったく同感です。家は人生最大の買い物であり、買うのは一生に一度か二度。なのに皆さん、家に縛られすぎています。住宅購入にかかる税負担が欧米並みに下がれば、日本人の家との付き合いかたも変わるでしょう。
田原 今の日本では、「家にしばられないライフスタイル=賃貸」と、なってしまいます。そこから脱出して家を買った人にとって、家はすごく大事なもののはずなのに、大切に手入れする人と、そうでない人とで、あまりに差がありすぎます。特に建売分譲の家を買った人に、買ったらその後、何もしないという人が多いようです。
井端 建売分譲は、家の在り方が画一的ですね。自分で考えて建てたわけではないから、思い入れがないのでしょう。しかし元をただせば、壊れたり傷んだりしたら、ていねいに直して使い続けるというのが日本の文化でした。
田原 新築は高い、安上がりに住むために中古を買ってリフォームをする、という先入観が、まだ多くの人にあると思います。しかし、本当はすべてのリフォームが安いとは限らないのですよ。工事していると建物の劣化が進んでいて、「建て替えたほうが安いのに」と思うことも時にはあります。
大塚 同じ部分だけで考えれば、直すより新しいモノに替えたほうが安いことも多い。これは現在のリフォームが抱える大きな問題です。それでも、トータルのコストなら、ほとんどの場合は、リフォームのほうが安い。今後ますます浸透していくでしょう。
※この記事は、週刊ダイヤモンド別冊『極上「中古」を探せ!』を基にダイヤモンドオンラインに掲載された、弊社代表井端のインタビューを転載した内容です。