井端 純一ホームアドバイザー代表取締役社長
- 田原宗
施工会社役員
青 取締役
早稲田大学芸術学校。工務店勤務を経て、有限会社青を設立(のちに株式会社)。建築家の設計する住宅を中心として、新築、改修問わず施工を専門に行っている。
――いい家をつくるため建築家が介在する
田原 実際には、われわれ工務店は工業化住宅でもたいていのことには対応できます。工務店の多くはハウスメーカーと特約店契約を結んで、工事を請け負っていますから。しかし、できるのと、その先を求めるのはまた、別の問題です。「いい家」にリフォームしたければ、建築家の構想力、クリエイティビティは欠かせません。
大塚 施主の意向を汲んで、どんな家にすれば一番喜んでもらえるかを考えるのが、建築家の役割だと、私は考えています。建築家にリフォームの相談にやってくる人は、「狭い」「暗い」「収納が少ない」の三つの悩みが圧倒的に多いのです。特に、収納は要注意です。工務店なら、「ここに棚を作ってくれ」と言われたら、言われたとおりに作るでしょう。それが仕事だからです。しかし、私なら最初に「収納は作りませんよ」と釘を刺します。収納はいくら増やしてもきりがない、数年後にはいっぱいになって、もっと収納がほしいと考えがちです。本当に必要なのは、モノを増やさないライフスタイルであって、ライフスタイルも含め、住まいをトータルで考えていくことが大切だし、そこに建築家による提案が必要となるわけです。
井端 そうはいっても、一般のユーザーには、建築家の存在はまだわかりづらい。耐震に強い人、意匠に強い人などそれぞれ、得意分野があるはずなのに、「建築家」というだけで一緒にしがちです。
大塚 「建築家に家を建てさせると、見た目はいいが使いづらい家になる」という人がいますが、実際には、前衛的な設計をする建築家もいれば、実用重視の設計をする建築家もいます。また、建築家によって感性も違う。誰に設計を頼むかで、その人にとってどれだけいい家になるかは大きく変わってきます。私が依頼主であれば、過去の作品などを見て、感じて、自分に合った建築家を探したい。そういう場があれば、建築家はもっと多くの方に受け入れてもらえると思います。
井端 それを願って、今年新たにオープンしたサイトが「建築家オウチーノ」です。多くの人にとって、建築家は敷居が高く、誰に頼めばいいのかもわかりません。また、著名建築家には依頼が殺到するが、それ以外の建築家にはなかなかチャンスが巡ってきません。これでは出会いの場がありません。才能ある建築家に、活躍する機会を提供したい。建築家がかかわる家づくりが身近になれば、もっと楽しくなる――これが「建築家オウチーノ」に託した私の気持ちです。
大塚 「建築家オウチーノ」の発展は、建築家が自分の得意分野を生かせる仕事と出会える場として、私たちも楽しみにしています。
――リフォームを通じて〝感動〟を与えたい
井端 昔の日本は長屋暮らしが当たり前で、家を買うという価値観は一般的ではなかった。戦後初めて、所有という意識が広まり、家は一挙に憧れの存在になりました。家を解体するとき、長年そこに住んでいた人は、必ず立ち会って家に惜別するでしょう。現代の日本人は、家に特別な思い入れがある。リフォームは、思い入れのある家の一部を残すことであり、浸透すれば、一つの文化と呼んでいいと思います。
田原 確かにリフォームで安くあげるといった経済感覚だけでなく、思い入れのある柱だからぜひ残したいといった価値観が広まれば、リフォームはもっと豊かになると思います。井端 現状では、「建築家に頼めばお金がかかる」というイメージがありますが、実際にはどうなのでしょうか。
田原 建築家は、ただ設計して終わりではなく、施工監理も行っており、設計した家を成に導く役割も持っています。建築家が介在する家づくりは、全体の構想や狙いもはっきりしているから、われわれ工務店も仕事をしやすい。経験上、家の完成度が高まるばかりでなく、無駄な出費は抑えられ、効率はいいように思います。
井端 大塚さんも出演しておられるテレビ番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」でも、完成した家を見せると、依頼者たちが「わあ!」と驚いて、目を輝かせますよね。ところが、現状では、日本のリフォームにはまだまだ〝感動〟が少ないように思います。金太郎飴のように、どれも同じ印象しか与えないリフォーム工事も多々見かけます。私は、建築家と工務店がコラボレーションして家づくりをすることで、リフォームでもっともっと多くの人に〝感動〟を与えられるのではないかと思っています。
大塚 テレビを観て、「あんなものはただの見せ物だ」という人がいますが、依頼者は、ヤラセ抜きで本当に目を輝かせて喜んでくれます。工夫すればもっといい家ができることを多くの人に知ってもらえたことは、よかったと思います。一人でも多くの人に、あの“感動”をお届けしたいですね。
- 座談会後、業界の今後に尽力する決意を新たに。左から大塚氏、井端氏、田原氏。
※この記事は、週刊ダイヤモンド別冊『極上「中古」を探せ!』を基にダイヤモンドオンラインに掲載された、弊社代表井端のインタビューを転載した内容です。